痛みの原因
体からの警告
殆どの体の組織は体からの警告機能を持っています。 これは専門的には侵害受容器と呼ばれ、痛みという形で警告を発しているのです。 関節の場合、正常に関節を動かせる範囲を超えて動かそうとした場合に警告を発します。 また捻挫のような、関節が動かせる範囲を超えた障害が生じればすぐに反応します。 この警告機能は皮膚、皮下組織、靭帯、関節突起、骨膜(骨全体を覆っている膜)、腱、脊髄硬膜、椎間板線維輪に含まれています。
化学的な原因による痛み
警告機能に化学物質が集中することで、化学的な痛みが発生します。 これは通常、炎症または感染で生じ、例をあげるとリウマチ関節炎、強直性関節炎、結核やバクテリア感染が含まれます。 また、外傷後の20〜30日後までは炎症による痛みが起こります。
構造的な原因による痛み
構造的な変化が、体の警告機能を刺激することにより痛みという形で現れます。 この痛みは、変化した構造に対する圧迫されたり引き伸ばされることで起こります。 組織そのものが、損傷するほどでは無くても痛みは引き起こります。 こうした痛みは、圧迫や引き伸ばされているという原因を取り除けば解消されますので、 姿勢を変えるだけで解消することが多いのです。 例えば、長時間座っていたことによる痛みは、立ち上がることのよって解消されます。
この現象の分かりやすい実験は、手で行えます。
左手の指で、右手の人差し指を大きく反らせてください。
我慢できる程度、痛くなるまで続けてみてください。
これが警告機能によって痛みが発生している状態です。
この状態を続けると、痛みはさらに広がっていき、最初はどこが痛かったのかすら分からなくなります。 次にゆっくりと指を曲げる前の元の位置に戻していくと、痛みは徐々に消えていきます。 これは、関節を曲げられない方向に無理に曲げようとすると痛みが増加して、本来の位置に戻せば痛みが消失するということを示しています。
脊柱にも同様のことが言えますが、痛みの発生もより複雑になります。 靭帯、関節包、線維輪は引き伸ばされると痛みを引き起こし、特に脊柱の後側の部分が引き伸ばされると、脊柱近辺の痛みが発生します。 そして椎間板の組織が変形を起こすと、体を元の位置に戻したりしても、痛みが続く原因になります。 痛みの出る姿勢を取らないようにしても、変形した組織が戻らない限り痛みは続くことになります。
上の例のとおり、痛みが生じるまで指を反らし、指を離せば痛みはすぐに和らぎます。 当然ですが、この痛みは病気ではないのです。 そしてこれは関節に関する痛みの、最も多い原因と考えられます。 この痛みは構造的な圧迫や引き伸ばしにより警告機能が発している危険信号です。 この警告機能による痛みは、原因となっている問題が取り除かれれば、回復します。
一般的に病気とはされない首や肩、腰などの多くの痛みは、このように発生しているのです。 悪い姿勢という構造的な問題から発生する痛みですから、薬品を使った治療や予防は有効とは言えないでしょう。
外傷を原因とする痛み
外傷が原因となる痛みは、構造的な変化と化学的な刺激によって起こります。 外力によって引き伸ばされることで、筋や靭帯が傷を受けるために、構造が原因となる痛みを感じます。 外傷を受けた後、しばらくすると化学物質が損傷部に集まります。 この化学物質が、周囲のセンサーの役目をする組織を刺激するので痛みを感じます。 この痛みは化学物質がそこにある限り痛みを生じるので、たとえ姿勢を変えても痛みは変わりません。
治ってくると次第に動かすことが出来るようになってきますが、 傷のあった部分は収縮していますので動かせる量は減っています。 よって、外傷による痛みのうち、最初は化学的な刺激によって引き起こされた持続する痛みが、 縮んだ筋肉や靭帯等を引き伸ばすときに発生する、断続的な痛みに変わります。